ZoningKit解析と海外展開

MORIZON NEXT(QGISプラグイン)が使う ZoningKit の中身と、日本以外の地域で使うために必要なもの | 2026-10-19

1. 目的

MORIZON NEXT がダウンロードする林野庁「もりぞん」ZoningKit の中身を調べ、ブラジル・カナダ・スペインなど日本以外の地域で林業・森林整備・環境対策に使えるようにするには何が必要かを整理する。

2. ZoningKit の中身

配布元は G空間情報センター(CKAN データセット rinya-morizon-dateset)。平面直角座標系の1〜13系ごとに ZoningKit_XX.zip がある(14〜19系は無い)。8系の ZIP(約423MB)の中身は次のとおり。

場所中身
DATA/SiteIndex/NPP/NPP08.tif純一次生産力(66MB)
DATA/SiteIndex/SRAD/SRAD08.tif日射係数(269MB)
DATA/SiteIndex/VTEX/VTEX08.tif凹凸度(130MB)
各 .tfw・.tif.aux.xml座標の付与情報と、表示色用の属性表
DATA/SAGYO-SYSTEM_CSV/集材作業効率の設定220113.xlsx集材作業効率の設定。プラグインの templates/ に同じものが入っている
DATA/DEM/・ROAD/・TATEMONO/・YOUSO/・ZONING/空のフォルダ(利用者が入れる場所)
ゾーニングファイル構成.txtフォルダ構成の説明だけ

実質的なデータは、地位指数の計算に使う NPP・SRAD・VTEX の3枚のラスターだけである。

3枚のラスターの性質(8系)

項目内容
格子3枚とも同じ。50mメッシュ、4815×8879セル、8系の全域
型・圧縮Float64、LZW圧縮、NoData は NaN
座標系EPSG:2450(JGD2000 / 平面直角座標系 VIII系)
値のあるセル約66%(海と系の外は NaN)
作成ソフトGRASS GIS 7.8.5(ファイルのメタデータより)
単位ファイルには書かれていない
データ意味(マニュアルより)1パーセンタイル中央値99パーセンタイル最大
NPP気候から見た、植物が育つ力11.415.617.417.8
SRAD斜面の向きや地形による日当たり664141316571751
VTEX谷か尾根か(谷ほど木がよく育つ傾向)044168375

マニュアルには、NPP は1km格子の気候データから、SRAD・VTEX は50m格子の標高から作られた全国一律のデータとある。

プラグインのコード(zoningkit_fetcher.py 冒頭)には「JGD2011 平面直角座標系」とあるが、ファイルの実際の座標系は JGD2000 である。

3. プラグインでの使われ方

3枚は地位指数(40年生時の上層木の樹高、m)の推定式に入る(processes/raster_writer/siteidx.py)。

地位指数 = a + (NPP − b)·c − (SRAD − d)·0.01·e − (VTEX − f)·0.01·g

係数は樹種ごとに既定値がある(settings_manager.py)。出典は光田靖・北原文章(2017)。

樹種abcdefg
スギ21.28015.821.0281347.091.00158.851.111
ヒノキ16.83011.050.96881396.00.0931961.920.8617
カラマツ22.51011.610.1291264.00.293944.31.125

4. 外国の地域で使うために必要なもの

ZoningKit の部分

  1. NPP・SRAD・VTEX を同じ定義で作り直す。SRAD・VTEX は算出方法が分かれば、どの国の DEM からでも作れる見込みがある。NPP は気候データが要り、どの式で作ったかを光田・北原(2017)や林野庁の資料で確かめる必要がある(今回のファイルからは作り方が分からない)。
  2. 係数を作り直す。係数は日本の森林調査データと日本の3樹種に当てはめた値なので、外国の樹種や気候にはそのまま使えない。現地の地位指数モデルを作るか、別の方法で作った地位指数ラスターを直接入れる(マニュアルでは「独自の地位指数」を入力欄から指定できる)。
  3. 集材作業効率の設定を置き換える。日本の作業システムの値なので、現地の作業システムで置き換える必要がある。

ZoningKit 以外で日本専用になっている部分

部分今の実装置き換え先の例
座標系の判定平面直角1〜13系だけ。国土地理院の逆ジオコーダで都道府県を調べて決めるUTM など
整備範囲のチェック地位データが無い範囲では「整備範囲外」として処理を止める新しい地位データの範囲に合わせる
DEM の取得元国土地理院、VIRTUAL SHIZUOKA、長野県Copernicus DEM などの全球 DEM、現地の LiDAR
建物・道路基盤地図情報(ログインが必要)OpenStreetMap

外国対応で一番重いのは、地位指数を出す方法、つまり3枚のラスターと日本向けの係数をどう置き換えるかである。それ以外は取得元と座標系の差し替えになる。

5. 植生の調査が必要になる部分

NPP・SRAD・VTEX は気候と地形から作るので、植生の調査がなくても作れる。植生の専門的な調査が必要になるのは、係数と樹種の部分である。日本の係数は、森林調査の実測値(樹高と林齢)を樹種ごとに3つのデータへ当てはめて求めている。

調査のまとめとして要るもの:

  1. 対象樹種:その地域で植林・施業の対象になる樹種(日本のスギ・ヒノキ・カラマツに当たるもの)
  2. 成長の基準:樹種ごとの基準林齢と、その齢での上層木の樹高。「40年生時」は日本の造林に合わせた基準で、成長の速い熱帯の樹種や遅い北方の樹種では基準林齢が変わる
  3. 位置付きの調査プロット:樹高・林齢・樹種と座標がそろったデータ(係数を当てはめ直すのに必要)
  4. 既存の資料:地位の区分図や成長量の表。あれば地位指数ラスターを直接入れる方法に回せる
日本で「NPP・日射・凹凸度」の3つで地位を説明できても、外国で同じ3つで説明できるとは限らない。乾燥地なら土壌水分、熱帯なら土壌の種類のほうが効くこともある。植生の調査は、係数だけでなく、どの要素で地位を説明するかを決める材料にもなる。

6. オープンデータでの組み立て

オープンデータで作れれば、日本以外(ブラジル、カナダ、スペインなど)の林業・整備・環境対策に使えるツールとして、使用国を広げられる。地位指数は「基準林齢での上層木の樹高」なので、次の3層に分けて作るのが現実的である。

層役割使えるオープンデータ
1. 説明する要素ZoningKit の3枚に当たる部分。国を選ばない地形:Copernicus DEM(30m)などから日射・凹凸度に当たる値を計算。気候:WorldClim などの気候データや衛星由来の NPP
2. 樹高と林齢係数を当てはめるための教師データ。国ごとのプロットが無くても仮の式を作れる樹高:UMD GLAD の全球樹高マップ(GEDI+Landsat、30m、2019年)。林齢:GAMI v2.0(100m、2010年・2020年、CC BY 4.0)。前身は Besnard et al.(2021)の1km林齢マップ
3. 国ごとの補正2 の結果を各国の国家森林調査で確かめて直す。植生の専門的な調査のまとめが入る各国の国家森林調査(次節)

7. 3か国の国家森林調査の状況

2026年10月19日に調べた範囲。

国公開状況注意点
スペインMITECO が IFN(国家森林調査)のデータを公開している。IFN4 は FAO のマイクロデータ目録にも登録されている利用条件として「出典と日付の明記」があるが、これは報告書についての記述。プロットデータのライセンスはダウンロードページで確かめる必要がある
カナダNFI のプロットは申請制の部分がある。各州のデータを統合した MAGPlot は ZIP で配布されている。SCANFI(30m、樹高・樹種構成・バイオマス、Open Government Licence)もあるBC州などはプロットの座標を保護している。SCANFI に地位指数の層があるかは確認できなかった
ブラジルSFB が IFN の公開データを、テーマ別(土壌・落葉落枝・土地利用・竹など)に州ごとの CSV で出している。調査単位(conglomerado)の中心座標は WGS84樹高・林齢をまとめた形で落とせるかは確かめられなかった。落葉落枝のデータは2025年10月に重複を訂正した版が出ている

8. 気をつける点

出典