計画の詰めと調査

ページ1を受けたやり取りの記録。翻訳(海外展開)の前提として計画を詰める | 2026-10-19

目次:0. プラグインの前提 / 1. 問題提起 / 2. 論点の整理 / 3. 前提の決定 / 4. 地位データ3要素の正体 / 5. 地位指数の入れ方 / 6. 国の比較 / 7. 確認事項

0. プラグインの前提:地位指数の仕組み

2026-10-19 追記。「収益性と災害リスクを考慮した森林ゾーニングの手引き」(林野庁、令和8(2026)年3月改訂版。G空間情報センターで無料公開:森林ゾーニングの手引き(R8.3改訂版))とプラグインのコード(processes/raster_writer/siteidx.py、profit.py)の照合による

手引きの式とコードの式の違い

手引き p.70 の MEMO の式:

スギ地位指数 = 21.28 + 1.028*NPP − 1.001*日射係数 − 1.111*凹凸度

プラグインが実際に計算している式:

スギ地位指数 = 21.28 + (NPP − 15.82)×1.028 − (SRAD − 1347.09)×0.01×1.001 − (VTEX − 58.85)×0.01×1.111

手引きの式には、各データから基準値を引くこと(15.82、1347.09、58.85)と ×0.01 が抜けている。手引きの式のまま計算すると、SRAD は1400前後なので −1400m のような値になり、意味が通らない。原版の手引きの書き方の問題である。

式の読み方

「平均的な場所の樹高 ± 条件による増減」という形。

3つの要素は何で、なぜ効くのか

要素何か地位指数への効き方理屈
NPP(純一次生産力)気候だけで決まる「その土地で植物が1年にどれだけ育つか」。光合成で吸収した炭素から呼吸で出した分を引いた量。光田先生の成長モデルを気象データで動かして1km格子で計算したものプラス(高いほど地位が上がる)暖かく、空気が乾きすぎない土地ほど木はよく育つ。広い範囲の差(地方ごとの差)を表す
SRAD(日射係数)斜面の向きと傾きで決まる日の当たり方。南向きの急斜面ほど高いマイナス(日当たりが強いほど地位が下がる)強い日射は土を乾かす。スギは乾燥に弱いので、日の当たりにくい北向きや谷の斜面のほうがよく育つ
VTEX(凹凸度)周り8方向の低い所をどれだけ見下ろせるか。尾根ほど高く、谷ほど低いマイナス(尾根ほど地位が下がる)尾根は風に当たって乾き、水も集まらない。谷は水が集まり湿る

要するに、「気候で決まる土地の基礎体力(NPP)」から「乾きやすさ(SRAD・VTEX)」を差し引く考え方。手引き p.16 の「植物の成長に大きく影響する土壌水分と関連する…地形指標は、地位指数と高い相関関係にある」が、SRAD と VTEX を使う理由にあたる。

樹種ごとの係数の違い

樹種NPP(気候)SRAD(日当たり)VTEX(尾根)読み取れる性格
スギ1.0281.0011.111気候にも乾燥にも敏感。湿った谷・北向きを好む
ヒノキ0.9690.0930.862気候には敏感だが、日当たりの影響はほとんど受けない
カラマツ0.1290.2941.125気候の差はあまり効かず、尾根か谷かが主に効く

各要素がどれだけ効くか(8系の値で試算、スギ)

データの1〜99パーセンタイル(ページ1の表)を式に入れた値。

8系のスギでは、日当たり(SRAD)の効きが最も大きい。

プラグインの中での使われ方

  1. 3樹種の地位指数ラスターを作る(siteidx.py)
  2. ユーザーが樹種を1つ選び、しきい値を2つ決めて 1点・2点・3点に分ける(profit.py)
  3. その点数を「集材作業効率」「道路からの距離」の点数と足して「収益性」にする
  4. 収益性と災害リスクを組み合わせてゾーニングする
地位指数は点数に分けるためだけに使われ、樹高の値そのものは計算に残らない。手引きが「相対値として扱ってください」と書いているのはこのためで、場所の順位が正しければ機能する作りである。外国では式を完全に再現しなくても、地位の良し悪しの順位を正しく出せる指標があれば使える。

1. 問題提起(ユーザー)

補足:ページ1で触れたコードの座標系の表記(JGD2011 と JGD2000)は原版の問題であり、扱わない。

2. 論点の整理(Claude)

翻訳の現状

tr() を使っているファイルは0。日本語を直接書いた .py が74、.ui が3、docs/manual.html も日本語。翻訳の仕組みはまだ無い。

翻訳と現地対応は別の作業

オープンデータで本当にできるかの問い

  1. 定義が分かるか:NPP・SRAD・VTEX の作り方(前提条件)
  2. ライセンス:実行時に元データを取りに行くのか、加工したものを置いて配るのか
  3. 取得の方法:URL の安定、認証の要否、自動アクセスが許されるか(静岡県オープンデータで遮断された前例)
  4. 科学的に成り立つか:衛星の林冠高と「上層木の樹高」のずれ。1地域での試しが要る

進め方の案

  1. 目的と対象を決める
  2. 3要素の定義を確かめる
  3. 候補国を比べる
  4. 候補国ごとのオープンデータの可否
  5. 1地域で試す(翻訳の仕組みづくりは並行)

3. 前提の決定(ユーザー)

項目回答
目的単純に、このシステムを有効に使える国があるかに興味があるだけで、現地の窓口は想定しない。QGIS の特性として、データをユーザーが用意でき、その用意をプラグインが誘導・作成できれば、良いツールとして提供できる。そこに設計者として興味がある
翻訳の範囲汎用としてなので全て。英語が最初。オープンデータの出どころによっては、その国の言語を優先する
次の作業調査(3要素の定義、候補国の比較、オープンデータの可否)を進める

4. 地位データ3要素の正体(調査)

出典

「光田靖・北原文章(2017)」は論文ではなく学会発表:光田 靖・北原文章「日本全国を対象としたスギ、ヒノキ、カラマツ地位指数分布の推定」第128回日本森林学会大会(鹿児島市)、2017年3月27日。科研費 15K07483(2015〜2017、代表:光田靖)の成果。要旨そのものは未確認。

定義(論文より)

各要素の意味と、地位指数への効き方の理屈は 0. プラグインの前提 を参照。

要素定義外国で作れるか
SRAD日射係数。太陽の天頂角・方位角と斜面の傾き・向きから計算(Smith et al. 1980)。土壌の乾きやすさに関わる日当たり。50m作れる DEM から QGIS のラスター計算で
VTEXVertical exposure index。8方向の俯角の合計(Mitsuda et al. 2007)。風による蒸散の受けやすさ。50m作れる 探す距離などは Mitsuda et al. 2007 で要確認
NPP炭素収支型の成長モデルで、初期条件をそろえて1km格子で10年間の成長を計算した平均。気象は1971〜2000年。気温が高く大気の乾燥が弱いほど高い同じものは作れない 日本の樹種に合わせたモデルの出力

当てはめには、国土地理院の50m DEM、気象庁の1km格子気象データ、全国の森林生態系多様性基礎調査(NFI)が使われている。

NPP は1枚だけで3樹種に共通して使われている。どの樹種のモデルで計算したかは要旨で確かめる必要がある。

結論:外国では「NPP の代わりの気候の要素(MODIS NPP 500m、WorldClim の気温・乾燥度など)+SRAD・VTEX+現地で当てはめた係数」という形で作り直す。式の形(定数+3項の一次式)はそのまま使える。

5. 地位指数の入れ方(設計のたたき台)

ユーザーがデータを用意し、プラグインが誘導・作成する前提での3段階。

段階ユーザーが用意するものプラグインがすること向く地域
A. 既製の地位指数現地の地位指数ラスター取得先の案内、座標系と範囲の合わせ込みニュージーランド、カナダ BC州など
B. 3要素から計算DEM、気候データ(取得を誘導)SRAD・VTEX を DEM から自動で作る。係数は既定値か手入力既製の地位指数が無い地域
C. 係数の当てはめ樹高・林齢・樹種・座標のプロット CSV3要素をプロットの位置で読み取り、係数を当てはめる調査データを持つ利用者。植生調査のまとめがここに入る

6. 国の比較(第一段階)

選ぶ基準:ツールの前提(急傾斜の人工林を生産と保全に分ける)に合うか、データ、地位指数の既製品、言語。ページ1の3か国は例であり根拠は無かったため、ニュージーランドを加えた。

ニュージーランドカナダ(BC州)スペインブラジル
言語英語英語・仏語スペイン語ポルトガル語
前提に合うか急傾斜のラジアータマツ人工林(架線集材の割合は未確認)急傾斜はあるが天然林が中心北部の山地にマツ・ユーカリの人工林ユーカリの短伐期、平地が多い
DEM全国 LiDAR 1m、CC BY 4.0、全国の8割超HRDEM 1〜2m(OGL、範囲は一部)、MRDEM 30m(全域)PNOA LiDAR の MDT 2m/5m(CC BY 4.0 は要確認)全国の高精細 DEM は確認できず
既製の地位指数Scion の地位指数・300 Index(25m)。CC BY-NC-ND 4.0PSPL(22樹種)。ライセンス未確認確認できず確認できず
プロットデータ未確認一部申請制、州が座標を保護IFN3 以降は位置付き(Access 形式)、ライセンス未確認州別 CSV は直径のみ、ライセンス表示「なし」

全球の共通データ:Copernicus DEM GLO-30(無料、出典の表示文と免責文が必要)、MODIS NPP(利用・再配布の制限なしと記載)。

暫定の見立て(決定ではない):1. ニュージーランド 2. カナダ BC州 3. スペイン(スペイン語圏への入口) 4. ブラジル(後回しの候補)

7. 確認事項

#項目目的状態
1Mitsuda et al.(2007)J. For. Res. 12(3) の本文(有料)VTEX・SRAD の正確な計算方法未
2第128回日本森林学会大会の要旨NPP がどの樹種のモデルで計算されたか未
3PNOA MDT02/MDT05 のライセンスCNIG のページで確定未
4BC州 PSPL のライセンスと形式段階 A で使えるか未
5スペイン IFN のプロットデータのライセンス段階 C の教師データに使えるか未
6LINZ 全国 DEM のライセンスと現在の範囲記載が一つにまとまっていない未
7ニュージーランドの地位指数の基準林齢20年と記憶しているが要確認未
8ニュージーランドの架線集材の割合とプロットデータの公開状況前提に合うかの裏付け未
9Scion の地位指数の取得方法(Koordinates のログインの要否)ユーザーを誘導できるか未

出典