MORIZON NEXT 操作マニュアル

収益性と災害リスクから森林をゾーニングする QGIS プラグイン

Morizon Next の位置づけ

  1. Morizon Next は個人が開発したプラグインです。林野庁、日本森林技術協会、原版の開発者による公式のものではありません。必要とする方に使っていただけるよう公開しています。
  2. 解析のロジックは原版を受け継いでいます。結果の扱いは、利用者ご自身の判断と責任でお願いします。
  3. 手引に基づく正統なツールは、原版のもりぞんです。原版が使える環境では、原版をお使いください。

オリジナル MORIZON が QGIS 4.x に対応する日を心待ちにしています。

はじめに

MORIZON NEXT は、林野庁の森林ゾーニング支援ツール「もりぞん(MORIZON)」を改良したプラグインです。ゾーニングの考え方と計算方法は原版をそのまま受け継いでいます。改良したのは、解析に必要なオープンデータをプラグインが自動で取得するようにした点です。

原版では、解析に入る前に、DEM の変換・結合、建物や道路のダウンロードと座標変換、作業システム表の Excel 編集などをすべて手作業で行う必要がありました。MORIZON NEXT では、QGIS の地図で範囲を表示してボタンを押せば、これらのデータがそろいます。

このマニュアルは、原版の「収益性と災害リスクを考慮した森林ゾーニングの手引き」(令和8年3月、以下「手引」)を置き換えるものではありません。操作に必要なことと、判断に必要な考え方に絞って書いています。詳しい背景を知りたいところには、手引の該当ページを p.00 の形で示しました。

最初の章はデータの準備です。データごとに「なぜこのデータが必要なのか」を説明しながら進めるので、読み終えるころには、この解析が何を計算しているのかもつかめるはずです。

まずは既定の設定のまま、最後まで一度通してみてください。次の手順だけで、ゾーニング図とゾーン統計量まで出力できます。この1回目は、操作の流れをつかむための試しです。しきい値は、結果の地図を見て合わせるものではありません(しきい値の考え方)。

  1. 範囲を決めるQGIS プロジェクトを保存する
    地図に対象地を一回り広く表示する
  2. データを自動取得「表示範囲から開始する」
    ※ダウンロード時間が必要です
    ※国土地理院アカウント必須
  3. 作業システムを反映「CSVとして反映する」手動
  4. タブの順に実行※ゾーン統計量手動設定あり
はじめに覚えること 最初に知っておくこと・することは、次の4つだけです。
  1. QGIS プロジェクトを保存してから始める(1.2)。
  2. QGIS の地図に、対象地を一回り広く表示する(1.2)。
  3. 要素計算タブの「表示範囲から開始する」を押して、データをそろえる(1章)。
  4. タブの順に、要素計算 → スコアリング → ゾーニング → ゾーン統計量 → 印刷 と進める(2章)。
フォルダの場所や構成、保存データの中身などは、プラグインが自動で扱います。最初は読み飛ばして構いません。データを別の PC に移すとき、保存データを他のソフトで使うときなど、必要になったときに参照してください。

何をするかを掴んだのち、そのための設定を覚えていきます。

ゾーン統計量の出力例
ゾーン統計量(最終的な出来形)
ゾーニング図の出力例
ゾーニング図
プラグインは地域の意思決定の材料(マップ)を提供する道具です

「もりぞん」は、入力データを用意すれば、GIS の各種機能を使ったマップの作成を自動で行うことができます。しかしながら、しきい値設定の段階は地域の合意形成による意思決定が必要であり、決して自動化することはできません。

本プラグインは、マップ作成の労力を軽減し、合意形成により注力するための道具として活用してください。ゾーニングにおいて重要なのは合意形成の過程なのです。

出典:林野庁「収益性と災害リスクを考慮した森林ゾーニングの手引き 森林ゾーニング支援ツール「もりぞん」【改訂版】操作マニュアル」(令和8年3月、作成:一般社団法人 日本森林技術協会)p.42 より引用

1. データの準備

1.1 何のためのデータか

最終的に作るのは、森林を次の4つに色分けしたゾーニングマップ(ゾーン統計量)です。

災害リスクが低い災害リスクが高い
収益性が高い林業に向いている収益は見込めるが、施業に配慮が必要
収益性が低い災害の心配は少ないが、収益は見込みにくい林業生産には向かない

「収益性」と「災害リスク」は、それぞれ3つの要素の点数(1〜3点)を合計して求めます。要素は全部で6つです。

軸要素何を表すか元になるデータ
収益性地位その土地で木がどれだけよく育つか地位データ(NPP・SRAD・VTEX)
収益性集材作業効率その地形で使える機械と作業のしやすさDEM + 作業システム
収益性地利道からの近さ(運び出しやすさ)道路 + DEM
災害リスク傾斜斜面の急さDEM
災害リスク地形の複雑さ尾根や谷の入り組み具合(崩れやすさの目安)DEM
災害リスク保全対象を含む流域崩れたとき、下流に人家があるかDEM + 建物
データ 要素 軸 結果 地位データ DEM(標高) 作業システム 道路 建物 地位 集材作業効率 地利 傾斜 地形の複雑さ 保全対象を含む流域 収益性 災害リスク ゾーン統計量 (4区分)
5種類のデータから6つの要素を計算し、収益性と災害リスクの2軸にまとめる

ここから2つのことがわかります。

  • 用意するデータは5種類だけです。DEM、地位データ、建物、道路、作業システムです。
  • DEM は6つの要素すべてに関わります。DEM の質と範囲が、結果全体の質を決めます。
地図にできないものは入っていません この解析に入るのは、地図上で数値として計算できるものだけです。材の質、所有者の意向、法令による規制、土砂災害警戒区域、過去の災害履歴などは含まれません。ゾーニング図は結論ではなく、関係者が話し合うためのたたき台です。
2.1.2 要素の選定・算出 p.12、3.5.1 表3-1 p.43

1.2 解析の準備:範囲と保存場所を決める

QGIS プロジェクトを先に保存する

自動取得したデータは、QGIS プロジェクトファイルがあるフォルダ(Project/morizon_next)に構成されて保存されます。複数の QGIS プロジェクトを置いても、プロジェクトごとに分かれます。データを取得・保存するにはプロジェクトが保存されている必要があります。必要があれば案内が出ます。

取得が終わると、フォルダの中は次のようになります。

(プロジェクトフォルダ)/
├─ ○○.qgz                     … QGIS プロジェクト
└─ morizon_next/
    ├─ ○○/                     … プロジェクト内の作業フォルダ(プロジェクトのファイル名)
    │   ├─ DATA/                … 入力データ
    │   │   ├─ DEM/             dem_fetched.tif
    │   │   ├─ SiteIndex/
    │   │   │   ├─ NPP/         npp_clipped.tif
    │   │   │   ├─ SRAD/        srad_clipped.tif
    │   │   │   └─ VTEX/        vtex_clipped.tif
    │   │   ├─ TATEMONO/        building.shp
    │   │   ├─ ROAD/            road_edge.shp
    │   │   └─ SAGYO-SYSTEM_CSV/ costcsv.csv
    │   ├─ YOUSO/               … 要素計算の出力
    │   ├─ ZONING/              … 収益性・災害リスク・ゾーニング図の出力
    │   └─ AGGREGATE/           … ゾーン統計量の出力
    ├─ shared/                  … 再取得を省くための控え(同じフォルダのプロジェクトで共有。触らなくてよい)
    └─ archive/                 … 保存ファイル(ZIP)

構成は地域データ「ZoningKit xx」とプラグインが使用する AGGREGATE を追加したものです。また共有データ、保存ディレクトリ shared/ archive/ が作成されます。

QGIS プロジェクトでは一つの解析を行います。保存したデータは読み込めますが、一度にプラグインが扱う Morizon Next 解析は一つです。

1.3 自動で取得するデータ

「表示範囲から開始する」を押すと、次の3種類のデータを順に自動で取得します。それぞれの意味と注意点は、次の節から説明します。

データ取得元取得する範囲2回目以降
DEM(標高)
(1.4)
国土地理院(地理院タイル)。静岡県・長野県では県の高解像度 DEM も選べる地図に表示している範囲取得のたびにダウンロードする
地位データ
(1.5)
ZoningKit(G空間情報センター)座標系の地域全体をダウンロードし、表示範囲を切り出す地域ごとに初回だけダウンロードし、以降は共有データ(morizon_next/shared)を使う
建物・道路縁
(1.6・1.7)
国土地理院 基盤地図情報(利用者登録とログインが必要)表示範囲の周りに地図1区画分を足した範囲取得済みのファイルは使い回す。同じ範囲なら、まとめ直しも省く

作業システム(1.8)は取得するものではなく、プラグインの画面で設定します。

取得について

  1. DEM国土地理院などから選択
  2. 地位データ初回は、地域全体(数百 MB)のダウンロード
  3. 建物・道路縁SHP国土地理院 基盤地図情報
    (利用者登録とログインが必要)

1.4 DEM(標高)

操作DEM を取得する ─ 「表示範囲から開始する」を押す

範囲は「QGIS の地図に表示している範囲」

「表示範囲から開始する」を押すと、その時点で QGIS の地図に表示されている範囲がデータの取得範囲になります。計画図や市町村界などのレイヤを表示し、対象地が画面に収まるように拡大・縮小してから始めてください。

・地形がすべての出発点になります。DEM から次のものを計算します。

  • 傾斜:急な斜面ほど崩れやすく、作業もしにくくなります。
  • 地形の複雑さ:尾根と谷が細かく入り組んだ場所は、侵食が進んでいて崩れやすい傾向があります。
  • 起伏量:周囲の最高点と最低点の差です。傾斜と組み合わせて、使える作業システムを決めます。
  • 流域:雨水や崩れた土砂がどこへ流れ下るかを求めます。
  • 道路や地位データと合わせて集材条件、災害リスクの判定に利用します。

取得される DEM の解像度と座標系設定は、自動化されています。国土地理院の DEM には 1m、5m、10m(※「国土地理院 DEM1A/5A/10B」)があり表示範囲の全体を同じ解像度でカバーできるものを選択肢として表示します。取得した DEM は、その地域の平面直角座標系で保存します。

AWS Terrarium について 取得元の「AWS Terrarium」は、国土地理院のデータが使えない地域のための予備です。自動で選択肢に残ります。
詳しい解説
なぜ解像度を混ぜないのか
解像度が違うデータをつなぎ合わせると、つなぎ目で傾斜や地形の複雑さの値が不自然に変わり、実際にはない「境界線」がゾーニング図に現れてしまいます。
なぜ座標系を変換するのか
Web 地図のタイルは、そのままでは 1m が実際の 1m になりません(北へ行くほどずれます)。変換しないと傾斜が数度緩く出て、道からの距離や面積も実際と違ってしまいます。「35度」「400m」といったしきい値を地域で話し合って決める以上、値は実際の長さ・角度で計算されている必要があります。
2.3.1 (1) 地形傾斜 p.20、3.7.2 p.70–75
なぜ対象地より一回り広く表示するのか
いくつかの要素は、そのセルの周りの地形を使って計算します。
  • 起伏量と地形の複雑さは、周囲約 490m 四方の標高を使います。
  • 保全対象を含む流域は、水が流れ下る先まで追いかけて計算します。
  • 地利は、範囲の外にある道のほうが近いこともあります。
範囲の縁では周りのデータが足りないため、値が正しく出ません。対象地の外側に 1km 程度の余白を取って表示してください。なお、建物と道路については、プラグインが自動で表示範囲より広め(地図1区画分)を取得します。
3.5.1「DEM は穴が無いように整備しましょう」p.42、5.1 p.94

広さと解像度の目安

手引が想定しているのは、市町村全域を 10m 解像度で解析する使い方です。

  • 解析の広さに合わせて自動調整されます。
  • 5m の DEM は、解析のときに自動で 10m に変換されます。
  • 1m の DEM は、およそ 5km 四方程度を超えると 10m に変換されます。1m のまま解析できるのは、施業団地程度の狭い範囲に限られます。
なぜ 10m で十分なのか 市町村単位のゾーニングで知りたいのは「この一帯は林業に向くか」という傾向で、1本1本の沢の位置ではありません。細かいデータで広い範囲を計算すると、処理時間がかかるわりに、画面や印刷ではその細かさが見えません。一方、施業団地で路網を検討するような場面では、1m の細かさが意味を持ちます。
2.1.1 目的、対象範囲の検討 p.10–11

1.5 地位データ(NPP・SRAD・VTEX)

操作地位データを取得する ─ 自動(操作不要)

  • 取得元は、林野庁がもりぞん用に公開している「ZoningKit」(G空間情報センター)です。登録は不要です。
  • 表示範囲の中心がどの座標系の地域にあるかを判定し、必要な部分だけを取り出します。
  • 一度取得した地域のデータは共有データ(morizon_next/shared)に保存されます。同じフォルダのプロジェクトでは、その地域のダウンロードを省きます。
  • 既存の ZoningKit(例:ZoningKit_08)がある場合は、展開したフォルダを「フォルダ選択から開始する」で選ぶと、キット内の地位データを共有データにコピーします。以降は、その地域のダウンロードを省きます。
なぜ必要か 収益性の土台になるのは地位、つまり「その土地で木がどれだけよく育つか」です。地位は 40 年生のときの上層木の樹高(地位指数)で表します。今の蓄積量は間伐などの手入れで大きく変わりますが、地位は土地そのものの力なので、施業ではほとんど変わりません。今は若い林でも、将来よく育つ土地を正しく評価できます。

ただし、全域の樹高を実際に測ることはできません。そこで、全国の森林調査データから作られた推定式を使い、次の3つのデータからスギ・ヒノキ・カラマツの地位指数を計算します。

  • NPP(純一次生産力):気候から見た、植物が育つ力
  • SRAD(日射係数):斜面の向きや地形による日当たり
  • VTEX(凹凸度):谷か尾根か。谷は水が集まり、木がよく育つ傾向があります
2.2.1 (1) 地位指数 p.16、3.7.2 (2) 地位 p.68–70
地位の値は「相対的な目安」として扱ってください NPP・SRAD・VTEX は、もともと 1km 格子の気候データと 50m 格子の標高から作られた全国一律のデータです。DEM が 10m でも、地位の細かさは実質的に 50m〜1km 程度で、格子状の段差が見えることがあります。「地位指数 18 なら 40 年で 18m になる」と絶対値で読むのではなく、地域の中で相対的に良い/悪いを見る目安にしてください。航空レーザ測量から独自に作った地位指数マップがあれば、そちらを使うほうが精度は上がります。
3.7.2 (1) 表3-8 p.66、(2) p.69
対応していない地域 ZoningKit は平面直角座標系の第1〜13系の地域だけで提供されています。第14〜19系(沖縄の一部、小笠原など)では自動取得できません。取得できない場合はその旨が表示されるので、手元のデータを指定してください(1.9)。

1.6 建物(保全対象)

操作建物を取得する ─ 確認で「はい」を選び、基盤地図情報にログイン

国土地理院の基盤地図情報「建築物の外周線」を取得し、DEM と同じ座標系で保存します。

なぜ必要か 同じように崩れやすい斜面でも、奥山で崩れるのと、下流に人家がある場所で崩れるのとでは、被害の大きさがまったく違います。崩れた土砂は土石流となって 2km 以上流れることもあります。

そこでこの解析では、DEM から流域(雨水が同じところへ集まる範囲)を求め、その中に建物があるかどうかで点数を付けます。これが「保全対象を含む流域」です。

2.3.2 保全対象との関係 p.23、3.7.2 (7) p.75
事前に利用者登録が必要です 基盤地図情報ダウンロードサービスの利用には、国土地理院のサイトでの利用者登録(無料)が必要です。登録した ID とパスワードをそのまま使います。
なぜ表示範囲より広く取るのか 流域は表示範囲の外まで広がっていることがあります。範囲のすぐ外にある建物も、流域の判定には影響します。そのため、建物と道路は表示範囲の周りを地図1区画分(2次メッシュ、約 10km 四方)余分に取得します。
取得した建物データに建物が無い場合 山奥など、対象範囲に建物が1件も無い場合があります。このときは建物欄に空の Shapefile を設定し、要素計算の保全対象を含む流域は、どの流域にも保全対象が無い条件(全域0)として作成します。道路が無い場合と同じく、空データを使って処理を続けるためです。

地域の保全対象を反映する場合は、独自の建物データの作成をおすすめします。作業フォルダの建物データに描き足して計算し直す手順は「2.2 高度な使い方」で説明します。

公式の手引:収益性と災害リスクを考慮した森林ゾーニングの手引き(令和8年3月) 参照ページ:p.23〜24/p.75

この要素でわからないこと
  • 対象にしているのは建物だけです。道路、鉄道、農地、取水施設など、ほかの保全対象は含まれません。
  • 「流域に建物があるか」を見ているだけで、土石流が実際に届くかどうかは計算していません。
  • 流域は約 5ha 以上のまとまりで区切っています。
結果は、土砂災害警戒区域などの情報と見比べて確かめてください。
3.7.2 (7) p.75

1.7 道路

操作道路縁を取得する ─ 建物と同時に自動(1.6)

なぜ必要か 伐った木は、道まで運び出さなければ売れません。道から遠いほど集材に手間と費用がかかり、収益性は下がります。この解析では、各地点から最寄りの道までの水平距離を「地利」として計算します。6つの要素の中で、地利だけは値が小さいほど収益性が高いことに注意してください。
2.2.1 (4) 路網からの距離 p.18、3.7.2 (4) 地利 p.71–72
取得した道路データに道路地物が無い場合 基盤地図情報から取得した道路データに、地利計算に使える有効な道路地物が1件も無い場合があります。このときは道路欄に空の Shapefile を設定し、要素計算の地利は DEM 全域を道路から遠い条件(1点相当)として作成します。スコアリング以降の機能を使うには道路欄が必要なので、空データを使って処理を続けるためです。

実際の林道・作業道を反映する場合は、独自の道路データの作成をおすすめします。作業フォルダの道路データに林道・作業道を描き足して計算し直す手順は「2.2 高度な使い方」で説明します。

公式の手引:収益性と災害リスクを考慮した森林ゾーニングの手引き(令和8年3月) 参照ページ:p.42〜43/p.71〜72

基盤地図情報の道路をそのまま使うときの注意
  • 林道や森林作業道は十分に含まれていません。山の中では、実際より道から遠く計算されがちです。手引でも、林道データは自分で用意するデータとされています。
  • 逆に、高速道路や国道など、搬出には使えない道も含まれています。
  • 距離は地図上の直線距離です。傾斜や、川を渡れないことは考慮していません。
都道府県や市町村の林道データがあれば、道路データと結合して使うことで、実態にずっと近い地利になります(1.9)。
3.7.2 (4) p.72、5.4 p.100

1.8 作業システム

操作作業システムを反映する ─ 「作業システム設定」の「CSVとして反映する」を押す

  • 色分布パネル(右):横軸が傾斜、縦軸が起伏量です。色が、その地形に割り当てる機械を表します。
  • 機材名の一覧(左):色と機械の対応です。数字が大きい機械ほど作業効率が高い扱いになります。リストの凡例と色分布パネルは連携しています。凡例をクリックすると「保有していない機械」としての扱いになり、色分布パネルでその機械が割り当てられていた範囲は「該当なし」(最も効率が低い)になります。
  • マージン:プラス側にすると、斜面を実際より最大3度緩いものとみなし、同じ地形でもより効率のよい機械を割り当てます(強気)。マイナス側はその逆(慎重)です。緩斜面と、機械の限界を超える急斜面の割り当ては動きません。
  • 「CSVとして反映する」を押すと、作業フォルダの DATA/SAGYO-SYSTEM_CSV/costcsv.csv に保存され、作業システムCSV 欄に自動で設定されます。

Excel のひな形でマスごとに決める場合

  1. 「Excelシートを開く」ひな形を DATA/SAGYO-SYSTEM_CSV に置いて開く
    (置いてあればそれを開く)
  2. 「入力」シートを編集ひな形の説明どおりに編集し、上書き保存
    (CSV での保存は不要)
  3. 表示を確かめる保存した内容が、パネルと一覧に表示される
  4. 「CSVとして反映する」押して反映する
なぜ必要か 同じようによく育つ森でも、緩やかな斜面ならハーベスタとフォワーダで効率よく出せますが、急斜面ではスイングヤーダやタワーヤーダ、架線が必要になり、コストが上がります。どの地形でどの機械を使えるかは、傾斜と起伏量(周囲約 490m 四方の最高点と最低点の差)でおおむね決まります。

この対応表は、5種類のデータの中で唯一、地域の人が判断して決めるものです。地域で実際に使われている機械と合っていなければ、集材作業効率は現実とずれます。

2.2.1 (3) 作業システム p.17、3.7.2 (3) p.70–71、5.5 p.105
現バージョンの制限 機材名の欄は書き換えられますが、書き換えても割り当てのパターンは変わりません。名前は凡例の表示に使われるだけです。地域独自の機材構成は、「保有していない機械」の指定とマージンで調整してください。

素材生産事業体の意見を聞きながら決めるのが理想です。まずは初期値のまま解析を一度通し、結果を見てから調整しても構いません。

1.9 自分でデータを用意する場合

航空レーザの DEM、独自の地位指数、林道データなど、手元により良いデータがあれば、各入力欄の右端「…」から個別に指定できます。

守ってほしいこと

  • DEM は平面直角座標系(単位 m)の GeoTIFF にしてください。ほかのデータはすべて DEM の座標系に合わせて変換されるため、DEM の座標系が解析全体の基準になります。緯度経度や Web メルカトルの DEM では、傾斜・距離・面積が正しく計算されません。
  • DEM に穴を開けないでください。民有林だけ、5条森林だけといった切り抜き方をした DEM は縁が多くなり、流域などが正しく計算できません。対象地より広い範囲を、隙間なく覆ってください。
  • 海や湖の標高値は取り除いてください。水面の平らな値が、傾斜などの統計を歪めます。
  • 建物と道路は Shapefile(.shp)で指定します。座標系が DEM と違っても自動で変換されます。
3.5.1 p.42–43、5.1 p.90–95

林道データを道路に加える

既設路網ライン欄に指定できるのは1ファイルだけです。基盤地図情報の道路縁と林道データを両方使うときは、先に QGIS で1つにまとめます。

  1. QGIS メニュー「ベクタ」→「データ管理ツール」→「ベクタレイヤのマージ」を開きます。
  2. road_edge.shp と林道データを選び、出力先の座標系には DEM と同じものを指定して、Shapefile として保存します。
  3. 保存したファイルを既設路網ライン欄に指定します。
使えない道(通行不能の林道、高速道路など)をあらかじめ削っておくと、地利はさらに実態に近づきます。

フォルダ選択から開始する

原版の ZoningKit のフォルダ(またはその中の DATA フォルダ)や、MORIZON NEXT の作業フォルダ(morizon_next/○○)を選ぶと、DATA の中のサブフォルダ(DEM、SiteIndex/NPP など)から入力ファイルをまとめて設定します。ファイルはコピーせず、選んだ場所のものをそのまま使い、出力もそのフォルダの YOUSO・ZONING・AGGREGATE に書き込みます(作業フォルダ:外部)。開始する前に、使うファイルの一覧を確認できます。選んだフォルダに出力(YOUSO・ZONING・AGGREGATE のファイル)がある場合は、途中まで進んだフォルダとして読み込み、出力をレイヤーに反映します。入力欄の「…」でファイルを個別に選んだ場合は、作業フォルダの DATA にコピーして使います。作業フォルダは QGIS プロジェクトに記録されるので、プロジェクトを保存して開き直すと「再開しますか?」と確認し、同じフォルダで続きから作業できます(「設定をクリアする」では初期状態、作業フォルダ:なし に戻ります)。

各サブフォルダにはファイルを1つだけ置いてください 同じフォルダに候補が複数あると、名前順で最初のファイルが選ばれます。意図しないファイルが選ばれないよう、古いファイルは別の場所に移しておいてください。

1.10 実行前の確認

各入力欄の右端に状態が表示されます。

  • 設定済:ファイルが指定されています。
  • 未設定:計算にチェックが入った要素に必要なのに、まだ指定されていません。
  • 任意:チェックが外れた要素だけに使うので、なくても実行できます。

「計算する要素を選択」のチェックは、必要なデータが揃った要素だけ選べるようになり、揃った時点で自動的にチェックが入ります。

  • DEM は対象地より広く、穴がないか
  • 地位データ・建物・道路が「設定済」になっているか
  • 作業システムは地域の機械に合わせたか(初期値のままでもよいが、そのことを覚えておく)
  • 林道データを加えるかどうか決めたか
  • 作業フォルダが「なし」になっていないか(出力先は作業フォルダの中に決まります)

個別に計算は実行でき、やり直しも出来ます。

要素計算が全て終わると次のタブでの実行の準備が整います。操作の続きは「2.1 要素計算」で詳しく説明します。

1.11 出典と利用条件

自動取得するデータの出典は次のとおりです。成果を資料にするときは出典を明記してください。

データ出典
DEM国土地理院(地理院タイル 標高タイル DEM1A / DEM5A / DEM10B)
DEM(静岡県内で選択時)静岡県「VIRTUAL SHIZUOKA」航空レーザ測量データ LP/Grid(G空間情報センター、CC BY 4.0)
DEM(長野県内で選択時)長野県建設部砂防課 航空レーザ測量成果 0.5mメッシュDEM(令和3〜7年度)、長野県林務部 航空レーザ測量成果 0.5mメッシュDEM(2013〜2014年度)(いずれも G空間情報センター)
建物・道路縁国土地理院 基盤地図情報(建築物の外周線、道路縁)
NPP・SRAD・VTEX林野庁「森林ゾーニング支援ツール もりぞん」ZoningKit(G空間情報センター)。地位指数の推定式は光田靖・北原文章(2017)による
DEM(予備)AWS Terrain Tiles(Mapzen Terrarium)

ゾーニング図を印刷して配布する場合など、使い方によっては国土地理院への利用手続きが必要になることがあります。事前に国土地理院の案内で確認することをお勧めします。

4.5 地図利用手続きの必要性の確認 p.86

2. 操作

解析は、タブの並びのとおり 要素計算 → スコアリング → ゾーニング → ゾーン統計量 → 印刷 の順に進めます。前の工程の結果を次の工程が使うので、途中の工程をやり直したときは、その先の工程もやり直します。

実行順序

  1. 要素計算要素レイヤーを生成
  2. スコアリング要素を点数に分ける
  3. ゾーニング点数で区分
  4. ゾーン統計量結果

2.1 要素計算

何をするか 1章で準備したデータから、収益性と災害リスクを評価するための要素(地図にできる評価の材料)を、ラスターとして計算します。
  • 収益性地位(スギ・ヒノキ・カラマツ)、集材作業効率、地利
  • 災害リスク地形の複雑さ、傾斜、保全対象を含む流域
2.1.2 要素の選定・算出 p.12、3.7.2 p.69–75
操作
  1. 「計算する要素を選択」で、計算する要素にチェックを入れます。必要なデータが揃った要素だけ選べます(1.10)。最初は全部を計算します。
  2. 「乗算出力を適用する」は、通常はオンのままにします。出力のレイヤーを乗算で重ねるので、上のレイヤーが下を隠さず、要素を重ねて見比べられます。表示が重いときはオフにできます。
  3. 「実行」を押します。処理の窓に進み具合が表示されます。「中断」を押すと、それまでに計算できた要素だけをレイヤーに出して止まります。
同じ要素の結果がすでにあるときは、上書きしてよいかを確かめます。「いいえ」を選ぶと何も変えずに止まり、前の結果のレイヤーも元の位置に戻ります。

出力

計算結果は、作業フォルダの YOUSO に保存され、レイヤーパネルの「Morizon Next」グループにまとめて表示されます。

  • 「収益性」と「災害リスク」の下に、要素ごとのグループができます。各グループには、計算した値そのもの(生データ)と、点数に分けたもの(名前の末尾が「[スコアリング]」)の2つのレイヤーが入ります。
  • 最初は各グループの表示がオフです。見たいグループのチェックを入れると表示されます。地利だけは、最初に点数の方が表示されます。
  • 「収益性」の要素どうしは、1つを表示すると他が消えます(同時に1つだけ表示)。「災害リスク」の要素は、傾斜の上に地形の複雑さや保全対象を含む流域を重ねて見られるよう、同時に表示できます。

作業フォルダの行のボタン

「出力先フォルダ」の上の行に、今の作業フォルダ(なし・プロジェクト内・外部)が表示されます。その右のボタンは次のとおりです。

  • 道路と建物を出力:取得・読み込みした道路縁と建築物を、「Morizon Next」グループの「災害リスク」の下の「道路・建物」グループに表示します。要素計算の入力に使っている道路と建物を、地図で確かめるときに使います。
  • 作業フォルダを開く:作業フォルダを、パソコンのファイル管理の画面で開きます。
DEM の細かさと計算の関係 要素計算は、原版と同じく 10m 格子を基本にしています。5m の DEM は常に、1m の DEM も範囲が約 25km²(5km 四方)を超えると、計算の前に 10m へまとめ直します。細かい DEM ほど結果が良くなるとは限りません(1.4)。

2.2 高度な使い方:道路・建物を編集して計算し直す

なぜ行うか 基盤地図情報の道路には、林道や森林作業道が十分に含まれていない一方、高速道路や国道のように搬出に使えない道や、通れない林道も含まれています(1.7)。使えない道を削り、計画中の路網を描き足してから地利を計算し直すと、計画した路網で収益性がどう変わるかを確かめられます。建物も同じ手順で、保全対象を足したり削ったりできます。
3.7.2 (4) p.71–72、5.4 p.100–105
操作
  1. 要素計算を一度実行し、結果を確かめます。
  2. 「作業フォルダを開く」で作業フォルダを開き、DATA/ROAD の道路のファイル(自動取得なら road_edge.shp)を QGIS に読み込みます。建物なら DATA/TATEMONO のファイルです。
  3. 読み込んだレイヤーを編集します。計画路網を線で描き足す、使えない道を削る、などです。編集が終わったら保存して編集を終えます。
  4. 「道路と建物を出力」を押します。編集が見つかると、表示が新しい内容に更新され、「要素計算をもう一度実行してください」と案内されます。
  5. 要素計算をもう一度実行します。道路を編集したなら「地利」、建物を編集したなら「保全対象を含む流域」だけを選べば足ります。
  6. 要素が変わったので、スコアリング・ゾーニング・ゾーン統計量も、この順にやり直します。
編集するのは作業フォルダのファイルです
  • 要素計算が使うのは、作業フォルダの DATA/ROAD・DATA/TATEMONO にあるファイルです。「道路・建物」グループに表示されるレイヤーは確認用の表示なので、こちらを編集しても計算には反映されません。
  • ファイルの名前と場所は変えずに、上書きで保存してください。別の名前で保存した場合は、要素計算タブの入力欄でそのファイルを指定し直します。
  • 編集中のまま保存していないと、変更はファイルに書き込まれていないので反映されません。
編集したあとに、もう一度自動取得したとき 編集したデータは消えません。
  • 前回と同じ範囲なら、「編集しているデータを使いますか?」と聞かれます。「はい」なら編集したデータをそのまま使い、取得しません。「いいえ」なら、編集したデータを同じフォルダの backup フォルダに日時付きの名前で残してから、取得し直します。
  • 前回と違う範囲なら、編集したデータを backup フォルダに残してから、新しい範囲で取得し直します。残した場所は画面で知らせます。
  • 編集していなければ、前回と同じ範囲で取得し直したときは、取得済みのデータをそのまま使います(まとめ直さないので早く終わります)。

2.3 スコアリング以降

スコアリング・ゾーニング・ゾーン統計量・印刷の各タブで行うことは、主にしきい値の設定です。操作は画面に沿って進めれば足りるので、ここでは細かい手順は省きます。しきい値の考え方と各タブでの設定は「3.1 しきい値」を参照してください。

3. パラメータとしきい値

しきい値は、結果の地図を見て決めるものではありません

しきい値は、同じデータの上にどこで線を引くかを決めるものです。しきい値を変えると地図の色分けは変わります。しかし、現地の災害の危険度や林業の採算性が変わるわけではありません。

  • しきい値を変えたら危険な場所が減った、ということは起こりません。減ったのは地図の上の色だけです。
  • しきい値を変えたら生産適地が増えた、ということも起こりません。増えたのは地図の上の色だけです。

結果の地図を見ながら、望む形になるまでしきい値を動かすのは、見たいものを作る手法です。そうして作ったゾーニング図は、合意形成の根拠になりません。

しきい値は、地域の方針や守るべき対象、作業にかかる費用など、結果の地図とは別の根拠で決めます。スコアリングタブで見られる値の分布(最小・最大・平均・中央値など)は、データがどう分かれているかを知るための材料です。決めた根拠は、後から説明できるように記録しておいてください。

しきい値を少し動かして、区分が大きく変わる場所を調べることはあります。これは結論の確かさを確かめるためのもので、地図を選ぶためのものではありません。

3.1 しきい値

しきい値は、スコアリング・ゾーニング・ゾーン統計量の3つの段階にあります。ここでは、どこに何を入れると何が変わるかをまとめます。しきい値の考え方の背景と事例は、手引に詳しく書かれています。

段階しきい値分けるもの初期値
スコアリング要素ごとに2つ要素の値を3区分し、点数を付ける面積がおおよそ3等分になる値(傾斜だけは 35°・45°)
ゾーニング収益性・災害リスクにそれぞれ1つ2軸を高・低に分け、組み合わせで4区分にする最小値と最大値の中間
ゾーン統計量「災害リスクが高い」割合小班に斜線を重ねるかどうか30%
3.7 しきい値の設定における考え方 p.63–76

スコアリング:要素のしきい値

「保全対象を含む流域」を除く5つの要素は、2つのしきい値で3つの区分に分けられ、区分ごとに点数が付きます。

スコアリングタブ
スコアリングタブ
しきい値設定の考え方

初期の設定では地利だけ 3点・2点・1点の順です。

区分ごとの点数は設定タブで決まります。初期の点数は次のとおりです。地利だけは、道から遠いほど点数が低くなる向きです。

軸要素値扱い初期値点数(区分1・2・3)
収益性地位地位指数(40年生時点の樹高の推定値、m)相対値面積でおおよそ3等分1・2・3
収益性集材作業効率作業効率(大きいほど効率がよい)絶対値面積でおおよそ3等分1・2・3
収益性地利道からの水平距離(m)絶対値面積でおおよそ3等分3・2・1
災害リスク傾斜傾斜(度)絶対値35°・45°1・2・3
災害リスク地形の複雑さ曲率の標準偏差相対値面積でおおよそ3等分1・2・3
災害リスク保全対象を含む流域流域に建物を含むか—(しきい値なし)—含まない 1・含む 2

絶対値と相対値:絶対値として扱う要素は、実際の値(度・m など)でしきい値を入れます。たとえば「何度より急なら災害リスクが高いと考えるか」を地域で決め、その角度を入れます。面積の割合は参考になりますが、割合だけを根拠にするのは好ましくありません。相対値として扱う要素は、値そのものに意味を持たせにくいため、統計値表示で値の分布を見ながら決めます。地位は、プラグインが全国一律の式で求めた地位指数を使う場合は相対値です。航空レーザ計測などで求めた精度の高い地位指数を使う場合は、樹高として絶対値で扱うこともできます。

統計値表示で分布にはっきりした山があれば、初期値のまま見ることを基本にします。

3.7.2 (1) 要素における絶対値と相対値 p.65–67、要素ごとの事例 p.68–75

しきい値を変えると変わるもの

  • しきい値1を上げると、区分1が広がり、区分2が狭まります。
  • しきい値2を上げると、区分3が狭まり、区分2が広がります。
  • 傾斜・地形の複雑さでは、しきい値を上げれば、災害リスクとしての傾斜・地形の複雑さが相対的に下がり、下げれば相対的に上がります。
  • 収益性は、地位・集材作業効率・地利の点数の合計で、3〜9点になります。
  • 災害リスクは、傾斜・地形の複雑さ・保全対象を含む流域の点数の合計です。初期の点数では、保全対象を含む流域が1点か2点なので、3〜8点になります。
  • 設定タブで区分ごとの点数を変えると、その要素が合計に占める重みが変わります。
設定タブのスコア設定
設定タブ(スコア設定)
4.3 設定値の変更(要素の点数の重みづけ)p.81

操作

ボタン働き
統計値表示要素の値の最小・最大・平均・中央値と、今のしきい値で分けた区分ごとの画素数を表示する。分布のグラフ(ヒストグラム)も表示する(グラフを描く部品 matplotlib が QGIS に入っていない環境では、グラフだけ表示されない)
更新入れたしきい値で、地図の色分けを更新する。更新した値は履歴に残る
戻る一つ前に「更新」または「初期値」を押したときの値に戻す
初期値初期値(面積でおおよそ3等分する値、傾斜は 35°・45°)に戻す
パラメータを読み込む前回「実行」したときに出力先へ保存されたしきい値(params.json)を読み込む

ゾーニング:収益性・災害リスクのしきい値

収益性と災害リスクは、それぞれ1つのしきい値で「高い(しきい値より大きい)」と「低い(しきい値以下)」に分けられ、その組み合わせで4区分になります。

ゾーニングタブ
ゾーニングタブ
災害リスクが低い災害リスクが高い
収益性が高い第2象限(林業経営適地)第1象限(災害リスクに注意)
収益性が低い第3象限(要収益性向上)第4象限(災害に強い森林管理)

初期値は、最小値と最大値の中間に置かれます。計算上は、高い側と低い側の面積がおおよそ半々になる値です(整数に切り捨て)。※原版も MORIZON NEXT も同じ計算を行います。

  • 収益性のしきい値を上げると、収益性が高い側(第1・第2象限)が狭まります。
  • 災害リスクのしきい値を上げると、災害リスクが高い側(第1・第4象限)が狭まります。
  • 値は数段階の整数しかないため、しきい値を1変えるだけで区分が大きく変わることがあります。うまく分けられないときは、要素のしきい値まで戻って見直します。
3.7.3 収益性、災害リスクに対するしきい値の考え方 p.76

ゾーン統計量:色表示のしきい値

小班などのポリゴンの中で、災害リスクが高い画素(第1象限と第4象限の合計)が設定した割合以上を占めるとき、そのポリゴンに斜線を重ねます。初期値は 30% です。ポリゴンの塗り分け(最も多い区分)には影響しません。

ゾーン統計量:針葉樹のフィーチャーだけで収益性を判定する(オプション)

収益性(地位・集材作業効率・地利)は、針葉樹の人工林で木材を生産することを前提にした指標です。広葉樹林などに「林業経営適地」「要収益性向上」の色が付いても、意味を持ちません。集計に使うポリゴンレイヤーに針葉樹を見分けられる列(例:針広別名称、樹種名称)があれば、区分の色を針葉樹のポリゴンだけに付けられます。

  1. 「任意のポリゴンで集計」でポリゴンレイヤーを選ぶ。
  2. 「針葉樹のフィーチャーだけで収益性を判定する」にチェックを入れる。
  3. 「照合する列」で、針葉樹を見分ける列を選ぶ。
  4. 「設定」を押し、列の値の一覧から、針葉樹とみなす値にチェックを入れて「確定」する。
  5. 「実行」する。
ゾーン統計量タブの針葉樹の設定
ゾーン統計量タブ(針葉樹とみなす値の設定)

針葉樹とみなす値に当てはまらないポリゴン(値が空のものを含む)は、4つの区分の色を付けず、淡い黄色で塗ります(凡例「区分外(針葉樹フィルタオプション)」)。選んだ値によって決まるので、ここに入るポリゴンが針葉樹でないとは限りません。災害リスクの斜線は、樹種に関係なく付きます。

このオプションが切り替えるのは地図の表示だけです。集計の値(最も多い区分・区分ごとの割合など)は変わらず、属性表にはすべてのポリゴンの計算どおりの区分が残ります。「流域で集計」では使えません。

ゾーン統計量:外周線を出力しない(オプション)

ゾーン統計量の地図を、森林計画図の小班線などほかのレイヤーと重ねて見るときのためのオプションです。ゾーン統計量タブで「外周線を出力しない」にチェックを入れて実行すると、次のように描きます。

  • 区分の塗り(第1〜第4象限、区分外)の外周線を描かない。
  • 災害リスクの斜線を薄く(不透明度30%)描く。斜線そのものは消えない。

切り替わるのは地図の表示だけで、集計の値は変わりません。「任意のポリゴンで集計」「流域で集計」のどちらでも使えます。チェックの状態は、次にプラグインを開いたときも残ります。

しきい値を決めるときに

4象限図ゾーニングのしきい値の設定イメージ
図3-39 4象限図ゾーニングのしきい値の設定イメージ(左と同じ図は、ゾーン統計量タブにも表示されます)
出典:林野庁「収益性と災害リスクを考慮した森林ゾーニングの手引き 森林ゾーニング支援ツール『もりぞん』【改訂版】操作マニュアル」(令和8年3月、作成:一般社団法人 日本森林技術協会)p.76 より引用

しきい値は、結果の地図とは別の根拠で決めます(しきい値の考え方)。手引には「マップ上で見た目を確認しながら」区分けするという表現があります(p.52、p.55)。これは、地域の合意を進める中で、計算結果と実際の森林管理を照らし合わせることを前提にした表現です。見たい地図になるようにしきい値を動かすことではありません。

3.7.1 ワークショップ等による合意形成 p.63–64

例:静岡県の森林資源解析データのメッシュで集計する

ゾーン統計量のポリゴンには、森林計画図の小班のほかに、静岡県森林資源解析データの20mメッシュも使えます。同じ範囲・同じ縮尺で比べると、次のように見え方が変わります(どちらも針葉樹のフィーチャーだけで色分けし、林班界を重ねています)。

森林計画図の小班で集計したゾーン統計量
森林計画図の小班で集計
20mメッシュで集計したゾーン統計量
20mメッシュで集計

背景:地理院地図(国土地理院)。メッシュ:静岡県森林資源解析データ(静岡県)を加工して作成。森林計画図:静岡県

  • 小班での集計は、小班を判断の単位として全体を見るのに向いています。大きな小班では、中の違いが1色にまとめられます。
  • メッシュでの集計は、狭い範囲の実態を見るのに向いています。森林計画図を重ねると、小班の中のどこがどの区分かが読めます。針葉樹かどうかも、メッシュの樹種(航空レーザで判定したもの)で見分けられます。
  • メッシュはポリゴンの数が多くなります。広い範囲を1枚で見ると、細かいマスが点々と並んで見えにくくなります。「外周線を出力しない」を合わせて使うと、ほかのレイヤーと重ねて見やすくなります。

4. 凡例の見方

検討中

5. 結果の使い方と注意点

ゾーニング図は、データが示すものをそのまま見るための地図です。地図と現地や地域の事情が合わない場所は、しきい値を変えて地図を合わせるのではなく、例外として扱います。「ここは災害リスクが高いと出ているが、○○のため、このように対処する」「ここは災害リスクが高いと出ていないが、○○のため、危険とみなす」というように、理由を付けて判断を記録します。

不具合報告

GitHub Issues で受け付けています。個人で開発しているため、すべての報告に対応できるとは限りません。

不具合は、使う環境や設定によって起きることが多く、同じ環境を用意しないと確かめられません。対応を検討するには、次の情報が必要です。

  • QGIS のバージョンと OS
  • MORIZON NEXT のバージョン
  • 操作の手順(どの画面で何をしたか)
  • エラーメッセージ(QGIS の「ログメッセージ」パネルの内容)
  • 使ったデータの種類(自動取得か、手持ちのデータか)
  • 追加している QGIS プラグインの一覧
  • 追加した Python ライブラリ。自分で入れたものと、プラグインの機能で自動的に入ったものの両方を書いてください
  • 上記の追加プラグインとライブラリを外し、動作要件に書いたものだけの環境で試した結果

頂いた情報で再現しない、判断ができない報告には対応ができないことがあります。